恒一「赤沢さんが股間に握手を求めてくる」

著者:2chSSまとめ

カテゴリ:Another

中編作品 (5053字)

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赤沢「握手しましょう、恒一くん」

恒一「握手?」

赤沢「ええ。死者の手は冷たいと言われているの」

恒一「へぇ……」

赤沢「だから、それを確認するための、握手」

恒一「分かった。何か緊張するよ、もし僕の手が冷た――って赤沢さん!?」

赤沢「?」

恒一「いやいや、不思議そうな顔するのやめてよ!」

赤沢「……恒一くん、あなたもしかして……死者、なの?」

恒一「違うけど」

赤沢「それなら何故握手を嫌がるの? おかしいじゃない」

恒一「握手なんだよね? 今からするのは」

赤沢「さっきからそう言っているでしょ? 変な恒一くん」

恒一「分かった。なんかごめん、ちょっと勘違いしてたみたいだ」

赤沢「勘違い? どんな?」

恒一「いや、何でもないんだ。流石に言うのも恥ずかしいし」

赤沢「そう? じゃあ改めて握手」スッ

恒一「うん……ってやっぱり!?」ササッ

赤沢「……恒一くん?」

恒一「そんなキツイ目で見たって駄目だってば!! 何考えてるんだよ、赤沢さんは!?」

赤沢「何って、だから握手だけど」

恒一「僕の手はそんなところにないよ!!」

赤沢「ごめんなさい、恒一くん。あなたの言ってることがよく分からない」

恒一「それを言いたいのはこっちだよ!!」

赤沢「何かお互いの認識に齟齬が発生しているようね、一度確認しましょう」

恒一「そうだね、本気でそうすべきだよ」

赤沢「私達の通う夜見北中の3年3組には『現象』と呼ばれるものがある。ここまではいい?」

恒一「いいよ」

赤沢「その『現象』とはクラスに死者が紛れこむことであり、死者の手は冷たいと言われている」

恒一「そこも大丈夫」

赤沢「今年は無い年だと思われていた。でも恒一くんが転校してきたことで事情が変わった。これは?」

恒一「それも分かる」

赤沢「そして対策係の私としては、転校生である恒一くん、あなたを調べない訳にはいかない。これはどうかしら?」

恒一「それも理解できるよ」

赤沢「そうよね、だから私は死者の手は冷たいという噂を元に、あなたの手の冷たさを確かめようとした」

恒一「うん、分かる」

赤沢「……? おかしいわね。どうにも認識の齟齬は発生していないみたいだけど」

恒一「問題は寧ろそこからだよ!!」

赤沢「……そこから? もうこの後はただ私と恒一くんが握手をするだけなんだけど」

恒一「だから、その握手だってば!」

赤沢「……あっ、そういうこと」

恒一「分かってくれた?」

赤沢「ごめんなさい、私が間違ってたわ」

恒一「いや、分かってくれたならいいよ」

赤沢「三神先生から聞いたわ。恒一くんのお父様はインドに行っているのよね」

恒一「えっ? そうだけどそれが今なにか関係――」

赤沢「確か握手で右手を出すのは失礼って文化だったわね、ごめんなさい、じゃあ左手で」

恒一「そんなことに拘ってる訳じゃないってば! しかもインドで出しちゃ駄目なのは左手だよ!!」

恒一「そっちがそのつもりならはっきり言うよ。もう恥ずかしがっていても仕方ない」

赤沢「ええ、そうして貰えるかしら」

恒一「何で! 赤沢さんは! 僕のズボンのチャックに手を伸ばすんだよ!!」

赤沢「」

桜木「」

風見「」

恒一「えっ、何この空気。まるで僕が悪いみたいな……」

桜木「さっ、榊原くんっ!!」ジーッ

恒一「えっと、はい。桜木さん、だっけ」

桜木「最近テレビでやってるの見ました! そういうのってセクハラって言うんですよ!!」ジーッ

恒一「えっ?」

桜木「女の子に、そんな……ズボンのチャックがどうとか……///」ジーッ

恒一(この人さっきからどこ見て喋ってるんだよ……)

風見「ゆかりの言う通りだよ」

桜木「風見くん」

風見「なにかな、ゆかり」

桜木「名前で呼ぶのやめてください。セクハラです」

風見「」

恒一(気胸が再発しそう。この人達もう帰ってくれないかな)

恒一「どうしたら」

赤沢「?」

恒一「どうしたら、帰ってくれますか」

赤沢「それは勿論、握手して死者かどうかを……」

恒一「……」ガチャガチャボロン

赤沢「Oh...ExtraFancy」

桜木「な、何やってるんですか!? 榊原くん///」ジーッ

風見「」

恒一「さあ! はやく握手!」

恒一(僕は病室で一体何をやってるんだろう……死にたい)

赤沢「ごほん、じゃあ失礼して……」ギュッ

恒一「あっ、本当にするんだ」

赤沢「えっ?」

恒一「いや、何だかんだでここまでのは悪質なジョークなのかもしれないという一縷の希望が」

赤沢「? よく分からない。やっぱり急に現象とかの話を聞かせて混乱させちゃったかしら?」

恒一「いや、もういいんだ……別にどうだって」

桜木「あの……榊原くん……」

恒一「……なに?」

桜木「その、こんなことを聞いて気を悪くしたら申し訳ないんですけど」

恒一「別に、もう何もかも今更だよ」

桜木「そ、そうですか。こほん、では遠慮なく」

恒一「うん」

桜木「は、生えてないのは、そういう現象か何かですか!?」

恒一「手術前に剃られただけだよ!! 普段はもっと……普通に生えてるよ」

桜木「せっ、セクハラはやめてください!///」

恒一(……もう訳が分からないよ、父さん)

赤沢「恒一くん?」ニギニギ

恒一「なに?」

赤沢「恒一くんの手、すごく温かい。やっぱりあなたは死者じゃない」スリスリ

恒一「社会的には死者も同然だけどね」

それから一年、結局は誰かが命を落とすということもないまま卒業式を目前に迎えた。

後から聞いた話では『現象』で死者が紛れ込んで云々というのは、やはり赤沢さん達のデマだったらしい。

かと言って『現象』そのもの自体が全くのデタラメかと言えば、そう言う訳でもないらしく……。