入須「すまない、失礼する」

著者:2chSSまとめ

カテゴリ:氷菓

中編作品 (6117字)

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作品タグ: SS

古典部部室

奉太郎(千反田は家の用事、里志は手芸部、伊原は漫研)

奉太郎(校舎内に於いて奇跡とも言える空間を確保できたと思ったんだが…)

奉太郎「…何の用ですか、先輩」

入須「用事がなくては来てはいけないのかな?」

奉太郎「…いえ、そう言ったルールはありませんが…」

入須「…悪かった。勿論、言いたい事は分かっているよ」

奉太郎「そうですか」

入須「そうだ」

奉太郎「………」

入須「………」ガタッ

奉太郎(しれっと座ったな、この人)

入須「……」

奉太郎「………」

入須「…昼間、屋上に登っていたな」

奉太郎「昼食が購買のパンだったんですよ」

入須「そうか、今日は暑かったが」

奉太郎「日陰で」

入須「…そうか」

奉太郎「………」

入須「……ふぅ。君と懐の探り合いをするのも楽しいんだが、時間を無駄にするのも惜しい」

奉太郎「そうですか」

入須「…案外根に持つタイプかな?」

奉太郎「いえ、そんなことは」

入須「だろう? 省エネ主義者はそんなにもエネルギーを消費する事はしないはずだ」

奉太郎「…主義主張を先輩の前で口にした覚えはないんですが」

入須「聞いたんだ」

奉太郎「誰に…は、もういいです」

入須「あっさりとした引き際も、君らしさかな」

奉太郎「……ここは古典部の部室ですが?」

入須「だろうな」

奉太郎「先輩の部活は知りませんが、少なくとも古典部では無い事は分かります」

入須「そうね」

奉太郎「…いや、やめましょう。確かに時間が惜しい」

入須「気づいてくれて助かるよ」

奉太郎「で、なんなんです?」

入須「不躾だな。確かに、最初に君が言った様に用事があったんだ」

奉太郎「千反田は今日は来ませんよ」

入須「彼女じゃない、君にだよ」

奉太郎「…俺にですか?」

入須「そうだ」

奉太郎「…この間の一件で役割は終わったと思っていましたが」

入須「役者の君ではなく、君自身に用がある」

奉太郎「…役者、ですか」

入須「語弊は無いわ。確かにこの間の時点で君は役者だった」

奉太郎「……それで」

入須「そうね、まずは話しを聞いて貰いましょう」

奉太郎「あまり聞きたくないんですが」

入須「先輩の頼みよ」

奉太郎「…こういう所でそう言うんですね」

入須「言うわ。言わないタイプに見える?」

奉太郎「どちらとも。そもそも俺は先輩にそこまで詳しくないですし」

入須「そうはなってくれないのか?」

奉太郎「…何故、そう聞くんですか?」

入須「……本題を話すとしよう」

奉太郎(なんなんだこの人は…)

入須「君は以前、私の考えを言い当てたことがあったな」

奉太郎「つい最近ですが」

入須「忘れもしない。誰に見られていた訳でも無いからな、羞恥も屈辱も無いが」

奉太郎「俺は先輩に見られてましたけど」

入須「…あるいは、君はそうかもしれないな」

奉太郎(…嫌いじゃない。だが、苦手だ)

入須「言い方が悪かったか?」

奉太郎「…いえ、気にしないで下さい」

入須「そうか。 …だが、私も一つ思った事はある」

奉太郎「…はぁ」

入須「……後悔だ」

奉太郎「…あなたが?」

入須「意外そうな顔だな?」

奉太郎「それは、そうでしょう?」

入須「…私は結論の為に全ての過程を気にしないと」

奉太郎「そう肯定したじゃないですか」

入須「いいえ、否定をしていないだけよ」

奉太郎「…同義じゃないんですか」

入須「それは捉え方次第よ。少なくとも、確固たる結論ではない」

奉太郎「……それで、その内容はなんなんです?」

入須「君に悪い事をした、謝りたい…とは思っていない」

奉太郎「そうでしょうね」

入須「それでも、この関係で終わらせるのは惜しいと思ったんだ」

奉太郎「…先刻言ってましたよね? 役者は終わったと」

入須「あぁ、一つ聞いてくれ」

奉太郎「はい」

入須「私には…好きな人がいるんだ」

奉太郎「…はぁ」

入須「随分気のない返事だな」

奉太郎「基本的に聞く事も話す事も無い内容だったもので」

入須「ふふっ、そうかそうか」

奉太郎「そう言った事なら千反田辺りに話した方が…」

入須「君に話したいんだ」

奉太郎「…門外漢にも程がありますけど」

入須「感情に疎いが論理に秀でる者、今回の場合はこちらが当て嵌まる」

奉太郎「……その手は通用しませんよ」

入須「そうだろうね。だが、私だって常にそうあるわけじゃない」

奉太郎「…次にいきましょう」

入須「懸命だ。君も知っての通り私はこの性格だが、通用しない事は勿論ある」

奉太郎「少なそうですがね」

入須「そうでもないさ。ただの小娘の言う事だ」

奉太郎「そうは思いませんけど」

入須「…それは、褒めてくれているのかな?」

奉太郎「…捉え方、ではないですね。実際に俺は先輩に一度尽くした事がありますし」